カメレオンの日光浴の注意点!! 紫外線灯だけじゃダメ!?【解説】
この記事では、カメレオンの日光浴について解説します。
カメレオンのケージには、紫外線灯やバスキングライトといった“擬似日光浴”ができる環境があるはずです。
しかし、わが家ではそれとは別に屋外で直接太陽の光を浴びさせる日光浴を行っています。
なぜ、ケージの照明以外にわざわざ手間のかかる日光浴をさせるのか、よくわからないという方もいるのではないでしょうか?
- 日光浴が必要な理由
- 照明の光と太陽光の違い
- 日光浴の際の注意点
といった、カメレオンの日光浴の基本を詳しく解説してみます。
「カメレオンに日光浴をさせたことがない」という方は、ぜひこの記事を読んでみてください。
カメレオンに日光浴が必要な理由
まずは、なぜケージの照明以外に日光浴が必要なのかを解説します。
わが家をはじめ、カメレオン飼育者たちが日光浴をさせるのは以下の 2 つが主な理由です。
- カメレオンは太陽光に最適化されている
- 照明の光は太陽光と質が全然違う
わが家では気候の良い季節は 2 日に 1 回以上のペースで日光浴を行っています。
カメレオンは太陽光に最適化されている
カメレオンに日光浴が効果的である理由は、カメレオン自身が太陽光に最適化されているからです。
以前、紫外線灯とバスキングライトの記事で、カメレオンには紫外線と熱が必要だと述べました。
この紫外線や熱は、とりあえず当たっていればよいというものではありません。
カメレオンの体に理想的な紫外線や熱の量は、生息地の太陽の光が基準となるように最適化されています。
カメレオンは、太陽の光で最も効率的に健康を維持できるように長い時間をかけて進化してきたのです。
照明の光は太陽光と質が全然違う
カメレオンのケージにも擬似的な日光浴のために紫外線灯やバスキングライトを設置します。
これらの照明があれば、わざわざ日光浴をする必要はないのではないか、と思われるかもしれません。
しかし、紫外線灯で得られる紫外線の成分は、化学反応で得られる非常に歪なものです。
爬虫類がビタミン D の生成に必要とする紫外線の量を評価するのに使われる指標の一つに、UV インデックス(以下 UVI )があります。
紫外線灯を選んだり設置したりするのに重要な UVI ですが、同程度の UVI を示す太陽光と紫外線灯の光であってもそのバランスは全く違います。
次の資料は、イギリスで爬虫類用品の技術分析を行なっている Tomaskas Ltd. が ZOO MED社のREPTISUN MEGA という 56W の紫外線灯の製品評価を行った物の一部です。
こちらのグラフは 360nm 以下の波長域、つまり紫外線部分のみにフォーカスされています。
黒からグレーに塗りつぶされたグラフラインが REPTISUN MEGA の紫外線分布です。
緑のグラフライン 3 つが太陽光で、真ん中のラインが REPTISUN MEGA と同じ UVI 7.6 の時の紫外線分布を示しています。
素人目にも違いがはっきりとわかるほど異なるグラフの形です。
現在爬虫類向けの紫外線灯を評価するのに最も一般的なのが UVI です。
その UVI が一致していたとしても、同じ紫外線成分であるとは限らないとおわかりいただけたと思います。
これは製品固有の問題でなく、一般に販売されている爬虫類向け紫外線灯全般に当てはまる、コストと技術の限界のような物です。
紫外線灯やバスキングライトがあるのに、なぜ屋外での日光浴をさせるのか?
それは、紫外線灯の光は太陽光とはかけ離れた質の光であり、それだけでは不十分だというのが多くのカメレオン飼育者たちの結論だからです。
今も多くのカメレオン飼育者ができるだけ頻繁な日光浴を実施しています。
また、日光浴はビタミン D の生成だけでなく、脱皮を促進する効果もあります。
脱皮不全を予防するのにも役立つので、積極的な実施をおすすめします。
わが家のカメレオンの日光浴のルール
太陽の光に最適化されたカメレオンにとって理想なのが、頻繁な日光浴をさせることです。
しかし、屋外で行う日光浴には危険もつきまといます。
- 脱走
- 野生動物
- 熱中症・カゼ
- 農薬
- 飛んできたり飛ばされたり
など、多くの危険があります。
そこで、わが家ではカメレオンを日光浴させるときに安全のために 5 つのルールを決めています。
- カメレオンはそのまま屋外に出さない
- 必ず外気温を確認して日陰も作る
- 近隣の農薬散布に気を配る
- 強風時は時を改める
- 必ず側についておく
カメレオンはそのまま屋外に出さない
まず、カメレオンを屋外に出すときは、必ず簡易ケージなどに入れるようにしています。
もちろんカメレオンを直接太陽の光に当てたほうがより健康に良いです。
しかし、万が一の脱走や野生動物に攻撃されたりといった危険があります。
例えすぐそばで見張っていても絶対に安全とは言い切れません。
そこで、わが家では布のメッシュでできた簡易の網ケージで日光浴をさせています。
「そこまで過保護にしないでも…」と言われるかもしれませんが、野良猫やたまにやってくるアオサギなど、カメレオンを食べてしまう生き物は案外と身近です。
万が一を考えてカメレオンをそのまま屋外に出さないというのがわが家のルールです。
必ず外気温を確認して日陰も作る
日光浴はできるだけカメレオンの過ごしやすい気候のときにします。
特に気温の確認と、日差しを避ける日陰の用意は大切です。
暑すぎたり寒すぎたりすると体調不良の原因になり、なんのために日光浴させているのかわからなくなってしまいます。
わが家では屋外用の温度計を、日光浴する場所に直射日光が当たるように設置しています。
空気はそれほど暑くなくても、日向では直射日光で30℃を超えていたり、逆に暖かく感じるのに陽差しがないと20℃を切っていたりするからです。
また、カメレオンがケージでしているように、暖かいところと涼しいところを行き来できるよう、日陰を作るようにします。
体が温まりすぎると熱中症の原因になるので、温度計が何度かにかかわらず、カメレオンが自分で体温を調節できるようにしておきましょう。
近隣の農薬散布に気を配る
日光浴でカメレオンを一瞬で死に追いやる可能性のある危険が農薬です。
現在最も広く使われている害虫駆除用の農薬成分が“ピレスロイド”です。
ピレスロイドは哺乳類や鳥類には影響が少ないですが、外温性の爬虫類や魚類や虫には強力な神経毒として作用します。
体内に入ると異常興奮状態を引き起こし、最悪の場合は死に至ります。
非常に即効性の高い成分のため、目に見えない農薬が風にのって飛んでくるのに気づいたときには手遅れということもあります。
対策方法はかなり限られ、非常にアナログかつ不確実な方法ばかりです。
- 家の周りの田畑や街路樹で農薬の散布があるか観察する
- できるだけ農薬散布の時期を覚えておく
- 事前にお知らせしてもらえるように所有者にお願いする
完璧に農薬の対策をするのは難しいですが、可能な限りカメレオンに影響のないよう気を配るほかにありません。
強風時は時を改める
カメレオンを屋外に出す日光浴では、強風も危険の一つです。
人の体格では問題のないサイズの飛来物でも、カメレオンには命取りになりかねません。
同様に、ちょっとした突風でケージごと飛ばされてしまうこともあります。
風が強いときは治まるまで少し待ってからにします。
必ずそばについておく
カメレオンの日光浴で最も大切なことが、必ずそばについておくということです。
私たちが環境を調整できる室内とは違って、屋外ではいつ何が起こるかわかりません。
ここまでの 4 つのルールを守っていても、何かあったとき最後にカメレオンを守れるのは私たちだけです。
日光浴は長時間でなくても構わないので、終わるまでそばについておいてください。
より効果的な日光浴のため気温と紫外線量に気をつける
カメレオンの効果的な日光浴のためには、気温や紫外線量についても気をつけることが大切です。
- 季節や天候、時間帯によって UVI は変化する
- 気温によって陽にあたる時間が変わる
- 紫外線は色々なもので減衰する
季節や天候、時間帯によって UVI は変化する
太陽光にどれだけカメレオンに必要な紫外線が含まれているかは、目に見えないのでよく分かりません。
カメレオンに必要な紫外線の量は UV インデックス(以下 UVI)という数値で評価できます。
UVI は季節や天候、時間帯によって大きく変化します。
適切な日光浴のタイミングや長さを考えるため、UVI メーターがあるとよりカメレオンにとって快適です。
カメレオンの UVI の適正値は種によって異なります。
詳しくはファーガソンゾーンの記事で紹介していますので、こちらもあわせて確認してみてください。
気温によって陽にあたる時間が変わる
カメレオンは気温によって陽にあたる時間が変わります。
きつい直射日光が当たっていて高温な場合や冬季で気温が低い場合は、カメレオンはすぐに日陰に入ったり、窓のほうを向いて家の中に入ろうとします。
カメレオンにとって心地よい気温でなければ、せっかく日光浴をさせても短時間しか紫外線を浴びてくれません。
先述の熱中症やカゼはもちろんですが、紫外線をしっかり浴びるという観点からも、できるだけカメレオンの過ごしやすい気温で日光浴を実施したほうが効果的です。
紫外線は色々なもので減衰する
太陽の光に含まれる紫外線は、さまざまなもので減衰します。
日陰か日向かはもちろん、太陽からカメレオンの間にあるものは全て紫外線の量に影響します。
具体的には、以下の 3 つが主な障害物です。
- 網戸
- 網ケージ
- 窓ガラス
網戸
網戸も紫外線を遮るものの一つです。
大手爬虫類用品メーカーの Zoo Med 社の紫外線灯に付属する取扱説明書では、メッシュケージやガラスケージのメッシュ蓋で紫外線が大幅に遮られると指摘されています。
NOTES ON SCREEN COVERS:
Screen covers on terrariums significantly reduce the amount of UVB that reaches your reptile’s basking site. As the screen mesh gets finer, more UVB is blocked or filtered.
スクリーンカバーに関する注意:
テラリウムのスクリーンカバーは、爬虫類の日光浴部位に到達する UVB の量を大幅に減らします。 スクリーンメッシュが細かくなると、より多くの UVB がブロックまたはフィルターされます。
ケージのメッシュで紫外線が遮られるのであれば、網戸も同じような影響がありそうです。
しかし、体感的には網戸くらいならほとんどの光が透過しているように感じます。
こちらもどれくらい UVI の値に変化があるか、実際に UVI メーターで確かめてみましょう。
ご覧のように網戸を通すだけで、およそ半分まで UVI の値が減少してしまいました。
網戸の影響は決して無視できるレベルのものではないとわかります。
網ケージ
まずカメレオンの日光浴で使う人が多い、網ケージを確認してみます。
網戸で UVI が半減したことで、なんとなく網戸よりも多く紫外線を遮っていそうな感じがします。
実際は以下のような数値でした。
直射日光に対して約 1/3 です。
カメレオンの安全を考えると仕方がないとはいえ、なかなか大きな減衰量に感じます。
今後、より紫外線を多く通す網目の粗い自作のケージの作成を考えてみたいと思います。
窓ガラス
最後に、窓ガラス越しで簡易な日光浴をされる人も多いと思うので、窓ガラスも確認してみましょう。
結論から言うと、カメレオンに必要な紫外線は、窓ガラスを通すとほぼなくなってしまいます。
最も透過率の低い合わせガラス( 2 重ガラスの間に樹脂フィルムが入っているもの)だとほぼ 100% の紫外線をカットします。
一般的な住宅用ペアガラス( 3 mm のガラス 2 枚の間に空気層があるもの)で、紫外線の透過率は約 60% です。
これだけ聞くと、一般的な窓ガラス越しなら 40% の紫外線が得られるように見えます。
しかし、窓ガラスによって遮られる紫外線成分には偏りがあり、より波長の短い成分ほど透過率が下がります。
紫外線では透過率が大きく異なり、400nm 付近では 90% 近い透過率がありますが、350nm 付近で 40% 程度、300nm 付近では 0% となり 300nm 以下の光は透過しません。
爬虫類が皮膚でビタミンDを生成するのに必要な紫外線の波長は 300 nm 付近なので、ガラス越しでは紫外線を浴びるという日光浴の効果は全く得られません。
実際にカメレオンに必要な紫外線成分を測定できる UVI メーターを使用してみると、測定限界値を下回っていました。
窓ガラス越しの場合は、体を温める以外の効果がないということを意識して使い分けたいところです。
カメレオンの日光浴 まとめ
今回はカメレオンのための日光浴について解説しました。
ケージには紫外線灯やバスキングライトがありますが、やはり太陽光と同等とは言えません。
より良質な紫外線をカメレオンに与えるためにも、日光浴はとても大切なお世話です。
屋外での日光浴には危険もあるので、カメレオンの健康やケガなどに気を配りながら適切に行ってほしいと思います。
この記事がカメレオン飼育者の方や、これから飼い始める方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。