カメレオンの生態と特徴を解説!!カメレオンってそもそも何者?【解説】
この記事では、カメレオンと生活するにあたって知っているときっと役に立つ、カメレオンの生物としての性質を解説します。
カメレオンと一緒に暮らしてみたい!! と思ってこちらのブログに辿り着いたと言うあなた。
そもそもカメレオンがどのような生き物かご存知でしょうか?
- どこに住んでるの?
- 色が変わるって本当?
- どんなものを食べてるの? etc…
さまざまな視点から、カメレオンたちと暮らしている私たちが知っていることをできるだけ多くまとめました。
きっとカメレオンという生き物を理解してもらえると思います。
YouTube版もあります!!
生物学的な分類
誰もが知っている独特な特徴を持つカメレオンですが、一体どんな動物の仲間なのでしょうか?
まずは、カメレオンの生物学的分類から見ていきましょう。
カメレオンは何の仲間?
カメレオンは、生物の分類としては爬虫綱→有鱗目→トカゲ亜目→イグアナ下目→カメレオン科。
簡単にいうと、トカゲの中にイグアナ、イグアナの中にカメレオン、という分類になっています。
カメレオンはトカゲでもあり、イグアナでもあると言うことです。
トカゲやイグアナの仲間と言われても、いまいちピンとこないのではないでしょうか?
私たちも、あまり似ていないな〜と思います。
それはやはり、カメレオンの個性的な特徴の数々のせいだと思います。
カメレオン科の分類
ひとえにカメレオン科と言っても、さまざまな属・種に分かれます。
カメレオン科の中の分類もご紹介します。
- カメレオン亜科
- アルカイウス属
- ハチノスカメレオン属
- カルンマカメレオン属
- カメレオン属
- フサエカメレオン属
- フタツノカメレオン属
- ムランジェンカメレオン属
- カレハカメレオン属
- チビオカレハカメレオン属
- トリオケロス属
- コノハカメレオン亜科
- コノハカメレオン属
- パレオン属
現在カメレオン科は 2 亜科、12 属に分類されています。
しかし、カメレオンは多くの哺乳類などと異なり、まだまだ研究の途上にあります。
そのため、新しい発見のたびに亜属が属に格上げされたり、既存の属から新属が分けられたりといった分類の変更が頻繁です。
上記の分類は、2015 年に爬虫類学者の Frank Glaw 博士が新たに提唱した分類によります。
それぞれの亜科や属について簡単に解説します。
和名は経済産業省のワシントン条約附属書、日本語訳版に記載されている名称です。
アルカイウス属(Archaius)
こちらの属は、アルカイウスチグリスという 1 種のみを含みます。
全長 13cm 程度、顎の先端にある小さな突起が特徴です。
タイガーカメレオンの名前でペットとしても稀に流通していますが、飼育情報はほとんどありません。
ハチノスカメレオン属(Bradypodion)
こちらの属はアフリカの南部に生息しており、約 20 種を含みます。
小型〜中型の種で、まとめてドワーフカメレオンと呼ばれたりします。
主に体色は茶褐色の種が多いですが、ケープドワーフカメレオンのように鮮やかな体色の場合もあるようです。
一部の種はペットとしても流通しているようですが、情報は少ないです。
カルンマカメレオン属(Calumma)
カルンマカメレオン属は 4 つの種群に分けられ、それぞれの種群の中に個別の種が複数含まれています。
合計で 40 種程度が確認されていますが、その全てがマダガスカルの固有種です。
小型〜大型種までさまざまで、大型種のパーソンカメレオンはペットとして流通しており、人気種の 1 つです。
- パーソンカメレオン
- オショネシーカメレオン
カメレオン属(Chamaeleo)
カメレオン属は現在 14 種を含み、全長 15 〜 45cm 程度の中型種で構成されます。
複数の種がペットとして流通していて、最も有名なのはエボシカメレオンという種で、ペットとして高い人気を誇ります。
他の属のカメレオンと異なり、一部の種では昆虫食だけでなく補助的に植物の葉や果物を食べるという特徴を持っています。
- エボシカメレオン
- チチュウカイカメレオン
フサエカメレオン属(Furcifer)
フサエカメレオン属は現在 24 種が含まれ、カメレオン属と同じく複数の種がペットとして流通しています。
中型〜大型種で構成され、多くがマダガスカルに生息しています。
最も有名なのはパンサーカメレオンで、ペットとしての人気はエボシカメレオンと双璧と言えます。
他の属に比べ、極端に鮮やかな体色を持つ種が多いのが特徴の一つです。
- パンサーカメレオン
- ウスタレカメレオン
- カーペットカメレオン
- スパイニーカメレオン
フタツノカメレオン属(Kinyongia)
フタツノカメレオン属は、主にオスの鼻先に2本のツノもしくはコブがある、いわゆる“ツノ系”のカメレオンです。
23 種を含み、体格は中型、多くの種が標高の高い山の中に生息しています。
ペットとして有名な種はフィッシャーカメレオンですが、フィッシャーカメレオンの名前で流通しているのは、ほぼ 100% フィッシャーカメレオンではなくフタツノカメレオン属の別の種だそうです。
画像は本物のフィッシャーカメレオンです。
ムランジェンカメレオン属(Nadzikambia)
ムランジェンカメレオン属は 2 種のカメレオンを含みます。
モザンビークとマラウイの熱帯雨林の山の渓谷に生息しています。
ペットとしては流通していません。
小型種であるという情報を見かけましたが、具体的なサイズなど詳細は不明。
カレハカメレオン属(Rhampholeon)
カレハカメレオン属には小型のカメレオンが 19 種含まれ、共通の特徴としてしっぽが短いことが挙げられます。
主に中央東アフリカが生息地で、地表や低木、草むらなどに住んでいます。
海外では、数種類がピグミーカメレオンやアフリカリーフカメレオンの名前でペットとして流通し、日本では“コノハカメレオン”の名前で流通しています。
手のひらに乗るサイズ感とケージが省スペースであることから一部で人気です。
チビオカレハカメレオン属(Rieppeleon)
チビオカレハカメレオン属には 3 種のカメレオンが含まれます。
カレハカメレオン属とよく似た特徴を持っており、2004 年まで同じ属に分類されていました。
混迷を極める“コノハカメレオン”の名でペットとして流通するカメレオンの中で、ヒゲコノハカメレオンだけは、顎にある髭のような鱗の隆起から種の特定が容易です。
トリオケロス属(Trioceros)
こちらは約 40 の種と亜種が含まれる“ツノ系”カメレオンの属で体格は中型〜大型です。
代表種が 3 本のツノを持つからか、それに由来した属名がついていますが、実際にはツノの数は 3 本以外に 2 本だったり 1 本だったり、あるいは 0 本だったり、挙句には 4 本の種もいます。
フタツノカメレオン属が持つツノよりも、尖った長い立派なツノを持つ種が多いです。
ペットとして複数の種が流通しており、最も有名なのはジャクソンカメレオンで、ツノ系カメレオンでは 1 番人気です。
- ジャクソンカメレオン
- ホーネリーカメレオン
- エリオットカメレオン
- デレマカメレオン
- メラーカメレオン
コノハカメレオン亜科(Brookesiinae)
こちらの亜科は、コノハカメレオン属(Brookesia)約 30 種とパレオン属(Palleon)2 属に分かれますが、共通した特徴を持っています。
- 小柄な体格
- 地表又は低木や草むらに生息する
- しっぽが短い
- 体色は茶色が基本
大きなものでも 10cm 程度の全長で、特にコノハカメレオン属は指先に乗ってしまうようなサイズの種を含みます。
この亜科のカメレオンは、ペットとしてはほとんど流通していません。
また、まだまだ新種の発見が続いており、今後も属単位で分類に新たな定義ができる可能性がありそうです。
カメレオンの分類まとめ
他のトカゲ類とは一線を画す個性的な生き物カメレオン。
カメレオンという科の中でさらに長い時間をかけて進化し様々な種へと分化していきました。
この記事で紹介した種だけでなく現在未発見の種もいますので、私たちが想像しているよりもずっと多くのカメレオンが生息しているのでしょう。
この記事では簡単な解説に留めていますが、もっと多くのカメレオンやその詳細について知りたい方はカメレオン専門の書籍を読んでみるのがおすすめです。
また、ひと昔前は上記のような図鑑でしかみることのできなかったカメレオンですが、今ではペットとして流通していて日本にいながら会うことのできる種もいます。
国内でも流通している、ペットとして人気のカメレオンを解説した記事もありますので、ぜひ読んでみてください。
カメレオンの身体的特徴
生物的な分類を見たところで、他のトカゲたちと別物にも思える、カメレオンの身体的な特徴の数々を見てみましょう。
カメレオンが他のトカゲやイグアナの仲間と大きく異なる、個性的な特徴として以下のようなものが挙げられます。
カメレオンの個性的な特徴
- よく伸びる舌
- 自由に動く目
- ミトンのような手足
- 体色の変化
- 長く器用なしっぽ
- ゆったりとした動き
①〜③番はどのカメレオンにも当てはまりますが、④〜⑥番には例外があったりと、カメレオンの中にも個性派がいます。
①よく伸びる舌
では最初に、よく伸びる舌について見ていきましょう。
カメレオンと言えば、特殊な舌を使った食事風景が思い浮かびます。
カメレオンの主食は昆虫類です。
昆虫たちはどれも素早く、近寄って捕まえるのは大変です。
しかし、カメレオンの舌はとても高速で、遠くまで届きます。
これならば、逃げ続ける獲物を追いかけまわる必要もなく、効率的に食事にありつけます。
普段は、口の中にしっかりとしまわれている舌ですが、おもちゃの吹き戻しのように ぐるぐる巻きになってはおらず、ルーズソックスのように、舌骨という一本の骨に縮めてしまっています。
舌を一番伸ばすと、大体鼻の先から尻尾の先までと同じくらいの長さです。
舌を伸ばす速度はおおよそ時速97kmで、1秒30コマの映像だとたった1コマの出来事です。
【参考】 Chameleon Tongues Among Fastest on Earth, Video Reveals
また、舌先で獲物をキャッチする仕組みについてですが、「粘度の高い唾液で引っ付ける」 と説明をされることが多いです。
しかし、実際にカメレオンと触れ合ったり、観察をしていると、それは誤りであることが分かります。
手で直接ごはんをあげるとき、指に舌が引っ付いたことはありませんし、写真を撮ってよく確認すると、舌先で餌を包み込んでいます。
②自由に動く目
次はぐるぐると自由に動く、カメレオンの目です。
つぶらな目をキョロキョロと動かしているのが印象的だと思います。
遠くの獲物を見つけ、正確な距離を測るためには高い視力と、立体視できる眼の仕組みが必要です。
そこで、爬虫類には珍しく正面に目を向けるため、特殊な構造の目を発達させたのではないでしょうか。カメレオンの目は左右独立して動かすことができ、その可動域は非常に広く、前後に 180 度、上下に 170 度も動き、死角はほとんどありません。
しかし逆に一度に視界に収められる 範囲は非常に狭く、一説によるとその視野角はたったの 20 度とも言われています。
何かに熱中して両目で一箇所を見つめていたりすると、人が近づいているのに気づかず、驚かせてしまうこともあります。
もしかすると、視力は高いけれど視野角の狭いという欠点を補うために、一生懸命休みなくキョロキョロと目を動かしているのかもしれません。
【参考】動物の視野
また、カメレオンは昼行性のため、光量が少ないと視力が低下し動けなくなります。
夕方にはベッドにしている、お気に入りの枝に帰り夜を待ちます。
③ミトンのような手足
次は、ミトンのような手足についてです。
いつも何かを一生懸命握っているようで可愛らしいです。
この手足は、主に木の上で生活する樹上棲のカメレオンにとって最適な形であると言えます。
ぱっと見、指は 2 本に見えますが、よく見ると爪が見えます。
握り込める太さの枝はしっかりと手のひらで握り、太すぎる木の幹などは爪を引っ掛けて登ることができます。
爪の本数から指は各 5 本ずつあり、2 ~ 3 本の指同士が癒合してミトンのような形になっていることがわかります。
二股になった指の組み合わせは手と足で本数が違い、手は体の外側が 2 本、足は体の外側が 3 本です。
④体色の変化
続いて、体色の変化についてです。
一般的にカメレオンは、忍者のように周囲の景色に溶け込むため体色を変化させると言われたりします。
しかし、カメレオンが擬態のために体色を変化させるという説は恐らく間違っています。
もし、擬態のために体色を変えるのであれば、一部のカメレオンの種に雌雄で基本の体色に差があることをうまく説明できません。
擬態が目的であれば、最初からメスのように目立たない色のほうが、有利なはずです。
しかし、実際はご覧の通りメスよりオスのほうが遥かに派手で、目立ちます。
では、カメレオンはどうして体色を変化させるのか、というと
- 気分
- 体調
- 気温や明るさ
などの要因です。
カメレオンと一緒に過ごしていると、よく体色の変化を目にします。
どういった時に大きな体色の変化があるのか観察していると、最も多く体色が変化するのは 気分の上下があった時です。
ご機嫌ななめな時は暗くくすんだ色、楽しいときは明るく綺麗な色です。
人が見ても機嫌がわかるので、カメレオン同士は体色で細かなコミュニケーションを取っているのかもしれません。
⑤長く器用なしっぽ
次は、長く器用なしっぽについてです。
他のトカゲの仲間とは違い、非常に重要な役目を果たしています。
カメレオンのしっぽは、ほとんどの種で全長の半分、体長と同じくらいです。
このしっぽにはとても多くの関節があり、器用で、第 5 の手足のように使っています。
時には手足の爪がかからず、滑ってしまうような場合最後の命綱として、しっぽをたぐって復帰する場合もあります。
さまざまな場面で大事な役目を果たすしっぽは、自切したりはせず、一生大切に使います。
多くの種は長いしっぽを持っていますが、一部の種はしっぽがとても短く、独特の愛らしさがあります。
これらのしっぽが短いカメレオンは、高い木の上ではなく落ち葉の上や背の低い草村など、地表近くで生活しています。
⑥ゆったりとした動き
最後は、とてもトカゲとは思えない、ゆっくりとした動きについてです。
一般的にトカゲの仲間はとてもすばしっこく、一瞬で居場所を見失うことも珍しくありません。
しかし、カメレオンは一歩一歩とてもゆっくり歩き、早く動くのは得意ではありません。
例え全力で走っても、人間の動きのほうが速く、簡単に捕まえられます。
自然界では、木の上で生活する種のカメレオンの場合、ヘビなどに襲われそうになると、自分で地面に飛び降りて逃げます。
どんなに急いで逃げても間に合わない、と言うことを理解した上での賢い選択です。
例外として、ナミブ砂漠に生息するナマクアカメレオンが挙げられ、灼熱の砂漠をカメレオンとは思えないスピードで爆走する映像がとても有名です。
【参考】YouTube|Keeping Cool – Nature’s Microworlds – Episode 9 Preview – BBC Four
その他身体的な特徴
その他のカメレオンの身体的な特徴も簡単に説明します。
体表とトゲトゲ
カメレオンの体は、他のトカゲと同じように鱗で覆われています。
触り心地は、柔らかめのバスケットボールのようです。
体の上下に小さなトゲトゲがありますが背中のトゲトゲは硬く お腹側のトゲトゲは柔らかいです。
他のトカゲ類と同じように、脱皮をします。
聴力と嗅覚
他のトカゲにはある耳の穴がなく、聴力は低いようです。
一説によると、聞こえている周波数の範囲は 200Hz ~ 600Hz とされていて、人の可聴域が 20Hz 〜 20kHz であることを考えると、かなり範囲が狭く不明瞭な音です。
同じく臭覚もあまり発達していないようで、呼吸をするためだけに使われているのではないか、と言われています。
確かにカメレオンと過ごして 5 年以上ですが、カメレオンが匂いを嗅ぐような仕草をまだ見たことがありません。
大小さまざまなカメレオン
カメレオンは体のサイズも様々です。
一番大きな種と一番小さな種、それぞれをご紹介します。
大きなカメレオン
最長種はウスタレカメレオンという種で 55 〜 68cm、別名マダガスカルジャイアントカメレオンの呼び名があります。
最重量種は、パーソンカメレオンで 700g にもなります。
パーソンカメレオンは実際に触れ合ったことがありますが、迫力のある大きな体と物静かで穏やかな雰囲気がとても印象的でした。
小さなカメレオン
では逆に小さなカメレオンはというと、2021 年に新種として登録されたブルケシアナナ(和名:ナナヒメカメレオン)という種で、大人のメスが 29mm オスは 22mm しかありません。
大人なのに指先に乗ってしまう可愛らしいサイズです。
生まれたてのパンサーカメレオン(約 0.4g)よりも小さいので、パーソンカメレオンとブルケシアナナの体重差はおそらく2000倍程度と推測できます。
【参考】New chameleon species may be world’s smallest reptile
カメレオンの生息地
他のトカゲ類にはない、さまざまな特徴と体のサイズのバリエーションを持つカメレオン。
そんな個性的な進化を遂げたカメレオンですが、生息域は意外と広いです。
カメレオンの生息域
主にサハラ砂漠を除くアフリカ大陸本土と、マダガスカルに生息しています。
熱帯雨林や、その山岳地帯、サバンナ、極端な場所だと砂漠など、温暖な気候でさえあれば生息域のどこにでも住んでいます。
それだけ多くの環境に適応できるよう、さまざまな種に分化して進化しました。
その中でも有名な生息地はマダガスカルです。
現在発見されているカメレオン約 220 種の 4 割ほどがマダガスカルの固有種です。
前述の通り、最大のカメレオンと最小のカメレオンの両方がマダガスカル島に生息しています。
マダガスカルは“カメレオンの楽園”と呼んでも差し障りないでしょう。
マダガスカルについて
“カメレオンの楽園”マダガスカルについて、もう少し触れておきたいと思います。
マダガスカルの基本的な情報は以下の通りです。
マダガスカルの基本データ
- 国名 マダガスカル共和国
- アフリカ大陸の南東に浮かぶ島国
- 本島のマダガスカル島は世界で4番目に大きな島
- 国土面積は日本の約1.6倍
- 人口約 2,700 万人
- 見つかった動植物の 90% がマダガスカルの固有種
日本の国土面積の約 1.6 倍の広さを持つ、かなり大きな島国です。
その本島マダガスカル島は、アフリカ大陸の南東にある世界で4番目に大きな島です。
カメレオンを含む、この島に生息する全生物の 90% がこの島々の固有種と言う独自の生態系を構成しています。
しかし、残念ながら人口の爆発的増加により、多くの生物が生息する森林が急激に減少し続けていて、固有種たちも数を減らし続けています。
元々、マダガスカル島の面積の 90% は森林で覆われていました。
約 2,000 年前に、人間がこの島で生活を始めると、森を切り開き文明を築きます。
特に、近代化が進むと、農地の確保のため焼畑が盛んになり、現在では元あった森林面積のたった10%しか残っていません。
マダガスカルから遥々わが家にやってきた、パンサーカメレオンのかーくんの故郷の森も、私たちと出会った半年後にはなくなってしまったようです。
カメレオンは、長距離を移動できないため住んでいる森がなくなると、運命を共にするほかありません。
マダガスカルをはじめとし、カメレオンの生息地の多くで、カメレオンの住める環境の破壊が深刻です。
生息地の減少を主な原因とし、カメレオンはワシントン条約の附属書に記載されています。
カメレオンとワシントン条約
カメレオンとワシントン条約には、とても深い関係があります。
皆さんも、ワシントン条約という言葉を一度は聞いたことがあると思います。
実際にどのような条約なのかご存知でしょうか?
ワシントン条約とは?
ワシントン条約は、対象の野生生物種の国際取引を制限する各国政府間の国際協定です。
対象種は、保護の必要性に応じて附属書Ⅰ〜Ⅲに記載され、附属書ごとに規制の内容が異なります。
ワシントン条約は 1975 年に発効されて以降、2 〜 3 年に 1 度の締約国会議で附属書の修正が行われています。
カメレオンのワシントン条約記載経緯
附属書Ⅱ:カメレオン属 記載
2006年 ムランジェンカメレオン属が独立
2009年 トリオケロス属が独立
2010年 アルカイウス属が独立
附属書Ⅱ:ハチノスカメレオン属 記載
2006年 フタツノカメレオン属が独立
附属書Ⅱ:フサエカメレオン属 記載
カルンマカメレオン属 記載
附属書Ⅰ:ロゼッタカメレオン 記載
附属書Ⅱ:コノハカメレオン属 記載
※ロゼッタカメレオンを除く
2013年 パレオン属が独立
附属書Ⅱ:カレハカメレオン属 記載
チビオカレハカメレオン属 記載
この回の改訂でカメレオン科12属全てが附属書に記載された
上記の通り、カメレオンは12の属全てがワシントン条約に記載されています。
1976 年に初めてカメレオン属が附属書Ⅱに記載されてから、40 年間で全ての属が記載されるに至りました。
中でもロゼッタカメレオンは附属書Ⅰに記載され、最も厳しい規制の対象です。
商取引も不可能で、学術研究を目的とした取引のみ可能ですが、輸出入国双方の許可書が必要となります。
それ以外のカメレオンも、商取引に許可が必要な附属書Ⅱに記載されています。
附属書Ⅱに記載されるカメレオンを輸出する際は、輸出国の許可書が必要です。
マダガスカルの対応
マダガスカルは前述の通り、生息する 90% の生物が固有種でありながらも、その生息地減少により多くの野生生物がワシントン条約に記載されています。
カメレオン科の中で唯一、附属書Ⅰに記載されるロゼッタカメレオンもマダガスカルが生息地です。
そこで、マダガスカルに政府は毎年、輸出業者と生体の輸出数量を厳格に管理し、野生のカメレオンの乱獲を防ぐ取り組みを続けています。
同時に、カメレオンの生息数の減少の根本的な原因である野生動物の住める森の減少を防ぐための取り組みを強化しています。
現在は野生動物の輸出をする業者に対し、輸出金額に見合った植林を条件として輸出許可書を発行しています。
【参考】マダガスカル便について。 | Crazy Genoのブログ
マダガスカルを含め、現地の人々が生活していくためには森林の開拓も仕方のないことなのかもしれません。
しかし、野生のカメレオンを取り巻く状況はかなり厳しいものであるということをみなさんにも知っておいていただきたいと思います。
野生のカメレオンとペット
ワシントン条約を含め、さまざまな枠組みで保護がされている、野生のカメレオンをペットにすることに矛盾を感じる方もいるかも知れません。
しかし、私たちはそうは考えていません。
ワシントン条約で規制された野生生物は、生息地の国の政府により種の存続に影響を与えないよう輸出個体数の調整がされます。
マダガスカルの例を見てもわかる様に、生息地の環境破壊が個体数減少の根本的な原因です。
つまり、野生のカメレオンの数を増やしていくには、自然環境を変えていかなければなりません。
いくら植林を続けても、森が成長しなければならない以上、この取り組みにはとても時間がかかります。
そこで、野生のカメレオンの保護だけではなく、もう一つの考え方としてカメレオンという種の保存という方法も同時に続けてみてはどうかと思います。
カメレオンがペットとして一般に繁殖・流通するようになれば、カメレオンという種の遺伝子はのちの世に残していくことができます。
一例として、現在エボシカメレオンはペットとして流通するほとんどが人口繁殖された個体です。
パンサーカメレオンも徐々に人口繁殖個体の流通量が増えてきています。
野生個体をペットとしてお迎えする際は、カメレオンの種の保存に協力するという気持ちで、可能であれば繁殖を検討されてはいかがでしょうか?
わが家でも、累代飼育を目標にして継続的な繁殖を視野に入れています。
カメレオンの繁殖は簡単なことではありませんが、挑戦してみる価値があると思います。
カメレオンの生き物としての特徴 まとめ
今回は、カメレオンがどんな生き物なのかをご紹介しました。
姿形こそ有名ですが、意外と知らないことが多かったのではないでしょうか?
一緒に暮らすのであれば、まずはカメレオンのことをよく知っておいた方が良いと思います。
わが家の場合は、初めてのカメレオン“かーくん”と一緒に暮らし始めてから知って驚いたことばかりでした。
私たちがカメレオンと一緒に暮らすと、どんな生活になるのか。
事前に知っておきたい、ペットとしてみたカメレオンの性質を解説した記事もあります。
今カメレオンのお迎えを検討されている方はぜひチェックしてみてください。
この記事がカメレオン飼育者の方や、これから飼い始める方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
関連サイトリンク
- Chamaeleo caroliquarti
- Anqingosaurus – Wikipedia
- ミトゲノム解析によるトカゲ類の高次系統関係と分岐年代の解明
- The Reptile Database(カメレオンのページ)
- Chameleon Tongues Among Fastest on Earth, Video Reveals
- 動物の視野
- YouTube|Keeping Cool – Nature’s Microworlds – Episode 9 Preview – BBC Four
- 経済産業省 ワシントン条約について
- CITES(ワシントン条約公式サイト)
- CrazyGeno Twitter(カメレオンのため直接マダガスカルへ通っている方)
- マダガスカル便について。 | Crazy Genoのブログ