ワイルドとCBってなに?カメレオン専門用語の意味と特徴【解説】
この記事では、カメレオンの個体を選ぶにあたって必ず耳にするカメレオンについての専門用語と、該当する個体の特徴、おすすめの条件などを解説します。
早速ですがカメレオンが販売される際には、個体説明として様々な情報が提示されます。
わが家のあーくんを販売店風に説明すると次のような感じです。
このような感じで説明されることが多いのですが、最初は何を言っているのかよくわからないと思います。
これらの専門用語について初めてのカメレオン選びで困らないよう、この記事で順番に解説していきます。
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ワイルドとCB
一番よく聞く用語にワイルドと CB があります。
同じような文脈で使用される、主な専門用語をまとめましたのでご覧ください。
似たような専門用語一覧
用語 | 英語 | 意味 |
---|---|---|
ワイルド | Wild Caught | 野生個体を捕獲したもの 他にWC、WDなどと呼ぶ |
持ち腹 | なし | 捕獲時すでに交配済みのワイルドのメス |
CH | Captive Hatched | 持ち腹が飼育下で産卵や出産をして生まれた個体 |
CBと区別しない場合も多く、持ち腹CBと言ったりもする | ||
CB | Captive Bred | 飼育環境下で産卵された卵から生まれた個体 |
CHと区別して飼育下で交配、産卵した場合に限って言う場合もある |
簡単に言うと、ワイルド=野生個体、CB =人口繁殖個体です。
ワイルド個体かつ、野生下ですでに交配済みのメスを持ち腹と呼び、持ち腹から飼育下で生まれた個体を CH(持ち腹 CB)と呼びます。
ワイルドのメスは持ち腹と分からず、ただのワイルドとして流通するケースも。
CB と CH は区別しなかったりもします。
ワイルドとCBそれぞれの特徴
これら中で特に大切な野生個体ワイルドと、人工繁殖個体の CB についてそれぞれの個体の特徴について説明します。
ワイルドとCBの傾向
- ワイルド
- 安価
- 人馴れしづらい
- CB
- 高価
- 人馴れしやすい
ワイルドは一般的に販売価格が安く人に馴れづらいと言われ、逆に CB は販売価格が高めで人に馴れやすいとされています。
販売価格の違い
販売価格の差は、人の手がどれだけの期間掛かっているかの差です。
ワイルドは生息地で捕獲されると、日本にやって来てブリーダーの下や販売店で体調を整えてから、私たちへ引き渡されます。
カメレオンがブリーダーや販売店にお世話されている期間が短いのが特徴です。
それに比べて CB は、
- 飼育下で産まれた卵の保管
- 孵化直後の不安定な健康状態の管理
- 販売できるようになるまでの育成
- ヤング以降は 1 頭 1 つのケージが全個体に必要
などの理由から、CB はワイルドに比べて販売価格が高価なケースが多いです。
人馴れのしやすさ
ワイルドは野生にいるところから、人との生活に慣れなければなりません。
CB は生まれた時から人工環境にいるので、人と過ごすのが当たり前の生活です。
そのためワイルドは人に馴れづらく、CB は人に馴れやすいと言われています。
ただし、これは個体差の影響が非常に大きいです。
わが家の例では、同じワイルドでもかーくんは人馴れしていてめーちゃんはなかなか慣れず、持ち腹 CB のけーくんはべた慣れで、その息子のわが家産 CB あーくんは卵から知り合いなのにまだ慣れません。
必ずしもワイルドだから人に馴れず、CB だと人に慣れるということではありません。
どんな性格でもその子の個性として魅力的ですが、もし気になる方は、お迎え前に性格の確認もしておくのがおすすめです。
ワイルドとCBの健康状態
ワイルドと CB の違いとして、ワイルドの方が体が弱く CB の方が丈夫だ、という意見もあります。
しかし、わが家ではワイルドが健康的に劣っているとは考えていません。
こういった見方が広まっている理由の一つとして、一部の心無いブリーダーや販売店の存在があると考えています。
ワイルド個体の立ち上げ
ワイルドのカメレオンは、生息地から日本にやってくるまで、とても過酷な旅をします。
そのダメージをしっかりとケアし、飼育者の元へと送り出せるよう体調を整えることが必要です。
この調整はワイルド個体の「立ち上げ」と呼ばれています。
また野生のカメレオンのほとんどが、線虫などの寄生虫を持って日本にやってくるので、立ち上げの最中に症状が出た場合は駆虫薬での処置なども必要です。
ワイルドは弱いのか
インターネット上の個体販売情報に健康状態の良くない個体の写真と、それを良好なコンディションであるかのように説明している販売店を見かけることがあります。
こういった個体が初めてカメレオンを飼育する方の元へ何のフォローもなく譲られると、どうなるのかは想像に難くないと思います。
きちんと立ち上げのされたワイルドであれば、捕獲されるまで野生を自力で生き抜くことができる強靭な個体であり、CB に健康面で劣るとは思えません。
ワイルドの個体を選ぶ場合は特に、しっかりとケアの行き届いたブリーダーやショップを選ぶことが大切です。
避けるべき販売店の特徴を紹介した記事もあるので、ぜひ参考にしてみてください。
クラッチとハッチ
クラッチ
カメレオンのお母さんは、一度の交配で数度に分けて産卵を行うのが普通です。
その 1 回分を「クラッチ」と呼び、同じクラッチから生まれたベビーたちを「クラッチメイト」と呼びます。
カメレオンは小型種を除き、1 度に数十個の卵を産むため、物凄く兄弟姉妹の多い生き物です。
わが家のパンサーカメレオン、めーちゃんは 1 クラッチで 25 個ほどの卵を産んでくれました。
ハッチ
卵からベビーが孵化することは「ハッチ」といいます。
卵胎生の種は例外ですが、通常は産卵と孵化の間はかなり期間が空いているので、カメレオンの年齢や成長度合いを考える際には産卵時期よりも孵化時期が重要です。
カメレオンの場合、日本語で孵化と言わず「ハッチ」と呼ばれます。
ベビー・ヤング・アダルト
ベビー、ヤング、アダルト、の違いについてです。
これらの言葉はそのままの意味で、生まれてすぐがベビーで大人がアダルトです。
カメレオンにおいて、それぞれの言葉が指す時期と特徴を見ていきましょう。
具体的な定義は?
区分 | 生体の生育状態 |
---|---|
ベビー | 孵化から第二次性徴前まで |
ベビーヤング | 第二次性徴の始まりかけ |
ヤング | 第二次性徴から完全に成長しきるまで |
ヤングアダルト | ほとんど成長してるけどもう少し大きくなりそう |
アダルト | 完全に成長して成熟した個体 |
フルアダルト | アダルトになってからちょっと経っている |
厳密な定義をあまり見聞きしないので、なんとなく使い分けられている感もありますが、
- ベビー
- 孵化から第二次性徴前まで
- ヤング
- 第二次性徴から完全に成長しきるまで
- アダルト
- 完全に成長して成熟した個体
という認識で問題ないと思います。
それぞれの間の微妙な期間の違いを表現するため、
- ベビーヤング
- 第二次性徴の始まりかけ
- ヤングアダルト
- ほとんど成長してるけどもう少し大きくなりそう
- フルアダルト
- アダルトになってからちょっと経っている
といった言い方をする場合もあります。
それぞれの時期の特徴
そして、それぞれの成長時期の特徴についてです。
カメレオンの場合、各時期でペットとしての性質がはっきりと異なります。
ベビー
追記:ベビーのお迎えについて注意喚起
この数年で生まれて間もないベビーを販売するお店が増えています。
SNS 上でお迎えしてすぐに悲しい結果になるケースを多く見かけるようになりました。
初めてのカメレオンお迎えであれば、エボシカメレオンやパンサーカメレオンの場合、頭胴長 8cm 以下の個体は避けることを強くおすすめします。
詳しくは避けるべきカメレオン販売店の記事をご覧ください。
まずはベビーですが、多くの場合本当に生まれたてのベビーが一般向けに販売される例はごく稀。
その理由は体調が不安定で、どれだけ適切な管理をしても突然死のリスクが高い時期だからです。
パンサーカメレオンを例にすると、最低でも生まれてから 3 ヶ月程度経ってから、健康状態を確認して販売される場合が多いです。
ベビーはこぼれ落ちそうな目や小さな体など、他の時期にない絶対的な可愛さがあり大きな魅力です。
しかし体が小さい分、環境の変化など些細なことで大きな影響を受けます。
ヤングやアダルトより丁寧なケアが必要です。
ヤング
ヤングは多くのカメレオンにおいて、最も健康に不安が少ない時期です。
その後の成長も見守ることもでき、楽しみの多い時期でもあります。
成長期でご飯をたっぷり食べさせてあげられるので、舌を伸ばすシーンをたくさん見ることも可能。
ただしカラーや模様が大事な種の場合、アダルトになった際の最終形がわからないと言う不安もあります。
どれだけ経験のあるブリーダーでも、色の出方だけは成長するまでわからないそうです。
アダルト
アダルトは成熟した色や模様の美しさや、ゆったりとした体の動きなど、最もカメレオンらしい時期です。
人と同じで成長期のヤングとは違って食事量の制限が必要になってきます。
それまでと同じように食べたいだけ食べると、すぐに肥満になり健康を損ねてしまいます。
しっかりとその子の体型を確認して、太らないけど痩せない、ちょうど良いご飯の量を考えなければなりません。
アダルトになると、病気など健康面での不安も徐々に出てきます。
種にもよりますが、カメレオンは人や犬や猫と比べると健康寿命が短い傾向にあります。
ほぼ無病で風邪をひいてもすぐ治る無敵状態の時期は大体、平均的寿命の2割~3割程度の期間しかありません。
フルアダルトと言える時期を迎えると、だんだんと健康面での下り坂へと突入していきます。
成長時期まとめ
それぞれの年齢においての特徴をまとめると、以下のようになります。
成長時期ごとの特徴
- ベビー
- とにかく可愛い
- 少し育って安定してからがおすすめ
- 体調が安定せず急に亡くなるケースがある
- ヤング
- 安定した体調で最も食欲旺盛
- 成長も見ることができる
- ただし色や柄が未知数
- アダルト
- 最もカメレオンらしい時期
- 食事制限が始まる年齢
- 病気に気をつけていく必要がある
それぞれの時期ごとに気をつけなければならないポイントが異なるので、どのくらい成長したカメレオンなのかは個体選びでは重要な要素の一つです。
頭胴長
カメレオンの体格を示す指標として、頭胴長というものがあります。
一般的な言葉で言うと体長のことです。
- 全長
- ツノや尻尾などを含めた全体の長さ
- 体長
- 鼻先または頭のてっぺんから肛門または総排出口までの長さ
日常会話では全長と体長が混同される場合も多いです。
カメレオン体格の話では、はっきりと尻尾やツノを含まないことを示す、頭胴長が使われるようになったのではないかと思います。
【参考】愛媛県レッドデータブック | 爬虫類・両生類 | 用語解説
なぜ頭胴長が指標なのか
では、なぜ全長ではなく頭胴長を体格の指標にするのかというと、
- ツノを持つ種がいる
- 種によって尻尾の長さが体に占める割合が全く異なる
- カメレオンの全長はとても計測が難しい
と言った理由が挙げられます。
同じ頭胴長の個体でもツノやしっぽの長さが異なるため、全長で語ると誤解が生じやすいです。
わが家でも何度も全長を測ろうと試してみていますが、正確な全長を測ることは難しいです。
背筋をしっかりと伸ばして、尻尾もしっかりぴーんと伸ばしてもらって…と言うお願いをするのが、カメレオンにはとても大変です。
警戒すると、カメレオンはすぐに尻尾を巻き取って、縮こまってしまいます。
頭胴長の方が、簡単に正しく測定できるので、指標として優れています。
雌雄の違いとメスの無精卵
専門用語とは違いますが、カメレオンにおける雌雄の違いについても触れておきたいと思います。
犬や猫ならば、雌雄の差は避妊手術や去勢などと関係があるくらいで性差における注意点は少ないです。
しかし、カメレオンは爬虫類であることからどちらを選ぶかはとても重要です。
カメレオンの性差
カメレオンの種によっては体格、ツノの有無、体色の鮮やかさなどで性差が大きなことがあり、この差を性的二形と呼びます。
カメレオンで性的二形のある代表的な種に、パンサーカメレオン、ジャクソンカメレオン、カーペットカメレオンがあります。
- パンサーカメレオン
- オスの方がとても鮮やか
- 体格も雌雄で違う
- ジャクソンカメレオン
- メスはツノがないか控えめ
- カーペットカメレオン
- メスは妊娠色が出るとペルシャ絨毯のような美しい発色に
このような性的二形もあり、雌雄どちらを選ぶのかはとても重要です。
ただし、カメレオンの雌雄判定はベビーの間はかなり難しいです。
厳密には特別な器具を総排出口に差し込み深さを測定することで雌雄判定は可能ですが、体を傷つけてしまう可能性があるためあまり一般的ではありません。
雌雄を選ぶのであれば、多くの場合は第二次性徴があるまで待つことになります。
メスの無精卵と卵詰まり
ヤングからアダルトで問題となるのがメスの無精卵です。
カメレオンは一般的な動物と同じくメスが卵を持ち産卵しますが、別の記事でも述べた通り、カメレオンに避妊手術を受けさせることはごく稀です。
鳥類や爬虫類が交配していなくても無精卵を作ってしまう、と言う問題がカメレオンのメスにも起こります。
有精卵だと適切な時期に陣痛が起こり産卵行動を引き起こしますが、無精卵だと陣痛が起こらず、卵が必要以上の大きさに育ってしまい、総排出口から体外に出せなくなってしまう場合があります。
これがいわゆる卵詰まりと言う現象です。
卵詰まりにはそのほかにも肥満や不適切な栄養バランスなど複数の理由があります。
早期に発見できれば産卵誘発剤を使い対処が可能ですが、発見が遅れると命に関わります。
メスのカメレオンと暮らす場合は、常に体型と体重に目を配り無精卵を持っていないかの確認をすることが必要です。
【参考】Petr Nečas: Egg Binding, Dystocia
その他カメレオン専門用語
その他、個体についての用語ではありませんが、カメレオンを選ぶ際によく話題に出る用語の解説です。
細かいですが、知っておくとよりスムーズに会話ができると思います。
マダガスカル便
カメレオンのCB個体の流通は年々増えてきていますが、依然としてワイルド個体の流通が多くを占めています。
別の記事でお話した通り、全カメレオンの約4割の種がマダガスカルに固有種として生息しているそうです。
そのため、現在ペットとして流通しているカメレオンの多くが、マダガスカルからの輸入によって日本にやってきます。
海外のカメレオンが日本にやってくる輸入便のうち、マダガスカルからのものを特にマダガスカル便と呼びます。
マダガスカル便のほとんどは、マダガスカルでカメレオンの数が増える冬季、11〜1月に日本にやってきます。
できるだけ多くの個体の中からカメレオンを選びたい方は、冬にお店に行ってみたりすると良いでしょう。
シッパー
上記のマダガスカル便のようにカメレオンを現地で輸出手続きを行い、日本などへ輸出する業者をシッパーと呼びます。
こちらも別の記事でお伝えした通り、カメレオン科の 12 の属全てがワシントン条約に記載されているので、シッパーは輸出の許可を生息地各国の政府に申請し許可書を得てから輸出をします。
獲り子
カメレオンの生息地でカメレオンを捕獲し、シッパーへ引き渡す人です。
マダガスカルなどではかなりおおらかな国民性からか、獲り子の時点でパンサーカメレオンのローカリティーが混ざってしまい、そのまま日本に届くなどのちょっとした事故もあるようです。
おすすめの個体条件は?
ここまでさまざまな専門用語と、該当するカメレオンの特徴などをご説明してきました。
では、初めてのカメレオンは、どのようなカメレオンを選べばよいのでしょうか?
わが家のおすすめのカメレオンは、以下の通りです。
- 健康なベビーヤング
- オス
- ワイルド or CBはお好みで
年齢はベビーヤングで雌雄が分かってすぐくらいがおすすめです。
これは生まれたてのベビーは突然死の可能性があり、雌雄も判別が難しく、逆にアダルトだと健康な状態で一緒に過ごせる時間が短くなってしまうからです。
雌雄はオスがおすすめです。
メスには卵詰まりの危険性があり、いきなりメスのカメレオンと暮らし始めるのは難しいからです。
繁殖の予定がない場合は、カメレオンの健康管理にある程度慣れてからの方が安全だと思います。
ただし、最初から繁殖を視野に入れていてペアでお迎えしたい、と言う場合は躊躇う必要はないと思います。
最後にワイルドか CB かと言う問題ですが、これはどちらが良くてどちらが悪い、と言ったことはないと考えています。
強いて言うならばワイルドの場合は寄生虫の駆虫が終わっているか、そうでなければ日本に来てどれくらい経っているのかは確認しておくと良いと思います。
カメレオンを選ぶ際に迷えるほどたくさんの選択肢がある場合は、健康なベビーヤングのオス、ワイルド or CB はお好みで選ぶ、と言うのがわが家のおすすめです。
カメレオンの専門用語:まとめ
今回は、カメレオンを選ぶ際に必ず耳にする専門用語の意味と、それに関連するおすすめの条件について解説しました。
専門用語の意味を一つひとつ確認しながら会話していると、とても時間がかかってブリーダーや販売店に本当に聞きたいことが聞けなかったりします。
ある程度用語の意味を理解してから、販売店やイベントに出向く方がスムーズです。
色々な条件が個体ごとに異なりますので、よく確認してからその個体をお迎えするか検討してみてください。
ただしどんな条件の個体かよりも、そのカメレオンをどれだけ好きになれるかが大切だと思うので、迷った時の参考程度に頭に入れておくだけで良いと思います。
ただし、カメレオンをお迎えする際の条件として、どうしても譲れないこともあります。
それが健康状態です。健康でないカメレオンをお迎えしてもカメレオンにも私たちにもよいことがありません。
どうやったら健康なカメレオンを選ぶことができるのか解説した記事がありますので、事前にチェックしてみてください。
この記事がカメレオン飼育者の方や、これから飼い始める方の参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。